「すべては自然から教わった」


「すべては自然から教わった~坂本善三の芸術論~」展が始まりました。
展示室には大きな作品から小さな作品まで26点、築140年以上の古民家を再生した本館では10点の善三作品を展示しています。この展覧会は6月1日まで開催しています。
以下、展示目録より********************
 「すべては自然から教わった」というのは、坂本善三がしばしば語っていた言葉です。
 坂本善三は、戦後、東京から阿蘇の内牧に引き上げてきてから毎日外輪山に登り、阿蘇を眺め続けます。そこで、善三にとって抽象への大きな転機となる気付きが訪れます。毎日眺めていた阿蘇から外輪山への風景が、自分の後ろにまで続いているという「等価値」の発見です。言葉にすると当たり前のことのようですが、自然の中のありとあらゆるものは価値の優劣なく等しく存在しているという考え方は、主題と背景という区別なく描く抽象絵画の考え方に相通じるもので、坂本善三は抽象絵画の本質を理論でなく、自らの経験と観察によって体得したのです。
 この意識の獲得があったからこそ、後のヨーロッパ留学を経て作品が抽象へと自然と変化していきます。抽象へと変化したというよりもむしろ、画面を等価値にとらえて描く作品に変化したと言ったほうがよいかもしれません。
 善三の作品に描かれた形は、ちょうど雲が自然条件によって様々な形を作り出すように、まるで偶然に生まれたものであるかのような自然さで描かれています。その作品が持つ空間性や、画面の広がりは、「背後にも続いている」という自然そのものの存在感をまさに体現しているといえましょう。
 本展では、「見せ場を作らない」「意識が出ないように」など、善三がしばしば語っている言葉をキーワードに、坂本善三が自然から獲得した考え方を作品とともに紹介します。
 展覧会をご覧になった後で阿蘇の景色を眺めながら、私たちを包み込む大自然の果てしない奥深さへと思いをはせていただければ幸いです。
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写真の左に写っている作品「青の阿蘇」は、昭和15年ごろに描かれたものです。
写真には写っていませんが、「外輪」シリーズ、「白い絵」シリーズも展示しています。
みなさまのお越しをお待ちしています。
 

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