29日め「顔リンピック」

8月30日、29日めは「顔リンピック」。




くるみちゃんが「近代五種」と言われるオリンピックの競技、射撃、フェンシング、馬術、競泳、マラソンに挑戦します。顔を両横、後ろにも作り、お面もかぶったりして。

待ちに待った助っ人・画家の武内明子さんの到着です。手を取って飛び跳ねて喜ぶくるみちゃん。

もう一人、大切なお客様(といいつつ、ほぼ美術館の一員…と勝手に思っている)の到着も待ちます。

「で、なにすればいいの?」(武内さん)
「これ、これを頼みたいんだよね!」(くるみちゃん)

「…くるみちゃん…、ほんっとひどいよね…これじゃわからないよ」(学芸員山下)

でも、2時間もかからずできあがったのが、これ。

※射的を「射撃だ」と別のお友達から指摘され、描き替えていた…はず。すいません。
…と、そんな始まりの一日でした。
いまは、最終日の朝!
これから最後の一日が始まります。
これで終わりなんて、信じられない。
また、更新します。
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後日です。
つづきます。
会場もできあがり、お客様も増えてきたので、じゃあそろそろ始めましょうか…とくるみちゃんに声をかけると、
「えーっと、えーっと、わたし、どうすればいいのかな?選手宣誓とかやればいいのかな。うん、そうね、宣誓する!」

宣誓。
射撃用のイヤーマフ(オーディオのものを代用)、サングラス(四畳半まんがで作ったもので代用)をつけています。
ちなみに、くるみちゃん、五種競技をスムーズに次々こなせるように、五種目全てのコスチュームを着込んで始めます。腕とか足とか、キッツキツだったようです。競技が終わると、そのコスチュームは脱いでいきます。
「がんばって!」

まずは、射撃。

横の顔が射撃担当。当然見えないので、「みなさーん、もっと右とか、左とか、教えてくださーい! わたし、見えてないので! 言ってもらわないと、わからないんですー!」
ギャラリーから「上、右の上」「いきすぎ、ちょっと左」「あー、惜しい、ちょっとずれた」などと、さかんに声がかかり始めました。
「あたった!」
「あたった?やったー! じゃあ、次! 次は、フェンシングー!!」
射撃の衣装・小道具を取ります。


脱ぐ脱ぐ。
そして、次のフェンシング会場へ走る!

5歩隣なので、すぐ到着。
華麗にサーベルを手に取り…。
サーベルは、壊れた傘の柄と、くり抜いた汁物茶碗!先に、ススキの葉!

「やあ!」


ツンツンと馬のお面を突き刺しながら
「馬刺しー!」
わははー!
「お客さんが笑ったら、次に行きまーす!」

「次、馬術ー!」
また一枚脱ぎます。
(この写真は山元彩香さん撮影)
「ヒヒーン」「どうどうどう」「ヒヒーン」「どうどうどう、よしよしよし」くるみちゃん、一人二役。

「いま、馬をなだめてまーす」
わははー!
馬のお面を装着!ここから、馬です!
「がんばれー」

「そのがんばれっていうの、もっと大きな声で!」
馬が、お客さんに注文つけてます。

「パカッパカッ、パカッパカッ」
障害物に向かって走るくるみちゃんに、会場のあちこちから声がかかります。

がんばれー!
飛べー!

「クリアー!跳びましたー!」
(子どもも、跳びました)

「次!競泳!」
服を脱ぎ捨てて、水着になり水泳帽をかぶり…


飛び込み!!

バシャバシャと泳ぎます!ジャリプールを!

このプールのコースロープも、あった方がいいよね、と言って、町内某所の某ご担当様にご相談申し上げ、急ぎ許可を取って頂き、お借りできたものです。「あった方がいいよね」と言い始めたのが前日の8月29日のこと! 図々しくさらに時間もないお願いに快く応じて頂いて、大変感謝申し上げます!

そして、最後の種目は「マラソン」!
水泳ゴールの横に、すでにスタート準備ができています。

「大丈夫?」
「大丈夫です!」
…と言いながら、砂利で皮膚もすりむけています。

ウエアを着て、シューズをはきます。


マラソンは、一人ではなく、“大勢”で!

先頭のくるみちゃんの他に、透明人間がズラリ。最後の一人は本物の人間、美術のS先生が務めます。6回あった中学生のワークショップに立ち会ってくださり、それ以外の日にもお越し頂いて、いろんな制作物を作るお手伝いもしてくださいました。
それ以上に、くるみちゃんとS先生は、ランナー仲間でもありました。今回の小国滞在中、早朝待ち合わせて一緒に町内を走っていたようです。(くるみちゃんは、フルマラソンどころじゃなく、300キロとか500キロとかのマラソンにも出場する本格派ランナーです)
「じゃあ、いきまーす!」「いっちに、いっちに、いいですかー! S先生、ちゃんとついてきてますかー!?」

「ひゃー」

二人をつないでいるのは、制作道場期間中ワークショップで作られた、中学生の裏の顔17枚と、スタッフ宅から持ち込まれた12足の靴。くつひもでつながれたシューズのヒモが、首をつなぐ裏の顔のヒモより長かったようです。おかげでS先生の首は前を行くくるみちゃんに引っ張られるのに、足もとには左右の靴が2~3足分、つまり4個から6個ものゴツいシューズがぶつかり合ってゴロゴロとび跳ねて、S先生はそれに足を取られないよう、くるみちゃんの足も引っ張らないよう、どう見てもマラソンには見えない動きでピョンピョンと跳躍してました。


マラソンのゴールで、五種終了。居合わせたお客さんから大きな拍手が送られました。

「ありがとうございました!」(後ろの顔が、おじぎ)

「いいね~」
「おもしろいね~」
「競泳、往復はさすがにムリだー」
「馬が終わったら、向こうからスタートでいいんじゃないかな」
「あー、そうしよう。他にないかな?」
少しの休憩をはさんで、「そろそろ二回めする?」
二回め、スタート!
射撃、フェンシング、乗馬ときて、競泳…と、思ったら!!
なんと、小さな挑戦者が!!

会場が、沸くのなんの。
しかも、身が軽いからか、砂利に沈まず、ダメージも少ない様子です。スイスイ進んで、くるみ選手はおいてきぼりでした。

ヒモの長さを調整したマラソンは、最終ランナーのS先生も明らかに走りやすくなった様子で、安心して楽しんで見ることができました。


梅雨が明けても雨ばかりだったこの夏も、ここぞという作品の日はなんとかお天気ももってくれました。この日も、そうでした。くるみちゃんは雨だからといって外に出ることを躊躇しないのだけど、くるみちゃんもお客様もみんな空の下で、ニコニコ笑ってるのが似合う作品でした。それが叶ってよかった。
最後のマラソンでは、こんなことも。

つないだシューズをなんとか履いて、くるみちゃんとS先生+3人、計5人でスタートしたのですが…

バッタバッタと倒れ…

犬にも見守られながら…

なんとかゴール!

よくやりました!

おつかれさまでした!

「なんか、まるで最終日みたいな盛り上がりやな。明日、大丈夫?」

8月10日「駆け込ん寺」(8月10日の、くるみちゃんの日記)にお越し頂いた〝師匠〟福岡県立美術館学芸員の竹口さん。もう一度駆けつけてくださいました。そして、弟子を見守る師匠として、くるみちゃんの最終日を案じてくださいました。ありがとうございます。
この日のくるみちゃん本人の反省日記はこちら
 

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