小国高校壁画完成 「坂﨑隆一展 裏を返せば」
今年の「シリーズアートの風」は、坂﨑隆一さんをゲストアーティストに迎え、熊本県立小国高等学校の協力のもと、小国高校生たちと一緒に展覧会を作っています。
昨年の11月に小国高校との打ち合わせがスタートし、生徒会のみなさんを中心に数回にわたって相談を重ねてきました。とはいえ、展覧会を作るための相談というよりは、今の高校生たちの課題や関心事がどんなものであるのかを見せてもらうことが坂﨑さんにとっては大切なこと。それをほんのちょっと別の角度から見てみることによって新しいおもしろさが生まれるのではないかというのが、そもそもこの展覧会の目指すところです。
ところがいざ高校生たちとの打ち合わせを始めてみると、私たちが心を奪われたのは小国高校生のすがすがしさ、楽しげな姿、素直な態度。他の高校とつぶさに比べたわけではないけれど、みんなが仲良く楽しそうに集っているそのあまりの輝きに、私たちはすっかり吸い寄せられてしまいました。
なんかもう、裏とかなくない?
それならまず、この今の輝きを形にしてみよう。
そこからスタートした小国高校の壁画「大切なもののかたち」。坂﨑さんの小国高校への1日入学を機に、高校生のみんなに描いてもらった「大切なもののかたち」のシルエットを集めて壁画を作成することになりました。作業は、原画の作成、壁へのトレース、塗料での描画など、あらゆる場面で入れ代わり立ち代わり参加してくれた高校生たちの手によって進められたのですが、その作業がまたなんというか、「感じがいい・・・」としか言いようがない爽やかさ、仲良しさ、かわいさ、楽しさにあふれていました。ああ、いい学校だなあ。
そして遂に完成。8/31-9/1の文化祭での一般公開を前にした8月30日、高校生たちの進行でお披露目式が行われました。校長先生、前生徒会長、美術部部長、坂﨑さんのあいさつの後、幕の代わりの養生シートを紅白リボンで引いて除幕。
ちなみにこの壁画が設置されている場所は、「談話ホール」と呼ばれる場所で、お弁当を食べたり、売店でお菓子を買ったり、高校生たちがくつろいで集まるところ。「あーこれ、私が描いたやつー」とか言いながら、リラックスしてくれたらいいなと思います。
で、裏は返るのか。
田舎の小さな町にある県立高校に対するイメージが激変し、目の当たりにした高校生たちのポテンシャルをどうにかしてみたいと思うようになったことは、少なくとも私にとっては「裏を返した」感があります。もっと「裏を返す」ことになるのか。私たちはいくつの目線を持つことができるのか。
坂本善三美術館で開催するドキュメント展「坂﨑隆一展 裏を返せば」(11/15-1/19)ご期待ください。
坂本善三美術館 学芸員 山下弘子