郷土の表現シリーズVol.4 山田依子・坂本寧展開催中
第4回目となる郷土の表現シリーズは、坂本善三生誕100年を記念して、坂本善三の最も身近な弟子たち二人の展覧会です。
山田依子(やまだよりこ1933年生・福岡市在住)は、20代のときに公募展の審査員と受賞者というかたちで坂本善三と出会います。その後、阿蘇を題材にした作品を描き続ける山田は、毎年阿蘇内牧に滞在してはスケッチをし、帰りに熊本の坂本善三宅に立ち寄ってスケッチの批評を受けたといいます。
山田は、キリスト教的な題材を阿蘇の大地にインスピレーションを受けながら描きます。その高潔な画面は非常に厳格で、かつ静かな詩情をたたえています。山田の作品の前で私たちは、何か圧倒的な高みにある存在を垣間見たような思いがわいてきます。絵を前にして頭を垂れるような気持ちになるのは、古から人々が芸術に託し続けてきた崇高な力を山田の作品が持っているからではないでしょうか。
坂本寧(さかもとやすし 1930年生・宇城市在住)は、旧制中学2年のときに坂本善三と出会って以来、坂本善三が亡くなるまで、最もそばで過ごした弟子の一人です。10代の多感な時期の出会いを経て、画家として様々なことを学び、また善三没後に坂本善三美術館の開館に尽力、館長を務めるなど、坂本寧を語る上で坂本善三を切り離すことはできません。また同様に、坂本善三にとっても坂本寧の存在は非常に大きく、坂本善三の伝道者としての坂本寧なくしては現在私たちに受け継がれている坂本善三の姿は無いと言ってもいいでしょう。
画家としての坂本寧は、個展で作品を発表し続けて、東京やフランスなど、国内外で幅広い活動をしてきました。その画風は次々と変遷し、非常に緻密な油彩の点描画や、居合いのような筆勢のモノタイプ、近年では、ペンや水彩を使った軽やかでユーモラスな作品へと驚くべき変化を見せています。特に、湧き出るイメージが増殖しながら連なる近年の作品は、私たちの眼を飽かずひきつけ、知らず知らずのうちに心の奥に眠っていた物語が呼び覚されます。
坂本善三から弟子たちへ、脈々と受け継がれる画家の精神を、師の名を冠する美術館でじっくりとご覧ください。