中学生、夏休みの鑑賞教室

地元・小国中学校の7年生(いわゆる中学1年生)の鑑賞教室がはじまりました。

毎年夏休みに当館で、小国中7年生を対象に作品の鑑賞と美術体験を準備しています。
お盆の前後に計6回、教室の時間を設定していて、それぞれに都合のいい日を選んでもらい、美術館に来てもらいます。
小国では、小学校の時にも1年から6年まで、毎年年に一度美術館で教室をしています。
だからみんな美術館にも慣れたものです。
私たちスタッフも毎年見ているので、顔と名前がわかる子が多いです。

今年は、開館20周年で収蔵の全作品を調査していることに関連して、中学生にも“作品調査”を経験してもらっています。
上の写真は、調査の仕方の例として、学芸員が額縁をとってどこに傷があるか、など見せているところです。
中学生たちには、いま展示中の作品に近寄って見てもらいます。




気付いたところは、チェックしてもらいます。
ただ作品を鑑賞していた時には気付かなかったいろんな傷や、絵の具のはがれたところなど、たくさん気づきます。
作品調査は約1時間でおわり、その後1時間で今年の美術体験「ろうけつ染め」をします。
現在、本館では「ワタリドリ計画」の「それぞれ20年」と題した座布団すごろくを展示中です。これは当館開館の1995年から今年2015年までの20年を振り返って、ワタリドリ計画の二人(麻生知子と武内明子)が、世界や日本や小国のいろんな出来事を60枚の座布団にしたものです。1枚につき一つの出来事が描かれています。これは、ひとつひとつ、“ろうけつ染め”の技法で制作されたものです。



中学生も、この展示を見たあと、ろうけつ染めにチャレンジします。
6回の教室のうち、はじめの2回はワタリドリ計画の二人が滞在中のタイミングでした。
先生になってもらいました。

「ろうけつ染めの“ろう”っていうのは、“ろうそく”のろうです。ろうは、あたためると液体になります。冷えると固まります。誕生日ケーキのろうそくも、火をつけると溶けてケーキに落ちたりするよね、そしたらケーキの上ですぐ固まるでしょ?その性質を使った技法です」
制作は、外のテラスで。
なにか、心にうかぶ形を描いてみよう。

(武内さんの服がひとつ前と変わっているのは、1回目と2回目の教室の写真を合わせて使っているからです。気づきましたか?)
麻生さんが、お手本を見せています。
「スイカを描きます」

木枠に布をはっています。布は、さらしを切ったものです。

ろうで線が描けました。
「ろうで線を描いたところは、白くなります。ろうは水をはじくから、その部分には色はつきません」

ろうが乾いたら、色もつけます。
「こんなふうにやってみてー」

これも、別の日のお手本。

何を描こうか、どう描こうか、と悩む男の子にワタリドリが二人でアドバイス。
柔道の背負い投げを形にしようとしています。
「うーん、柔道を知らないからよくわかんないなー」と武内さんも一緒に悩む。
結局、少しアレンジして柔道でメダルをもらった思い出を描くことに。

たまたまいたバッタ。
このあとこの男の子のモチーフになりました。

画用紙にイメージを描いたあと、布に下絵を描いたら、いよいよ布にろうをのせます。青いポットでろうをあたためて溶かしています。筆につけて描きます。



ろうが乾いたら、習字の墨と朱墨で色をつけます。





色がしっかり布に定着したら、ろうを熱湯で溶かして“ろう抜き”をして完成です。
完成したら、展示します。お楽しみに。

 

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